ガス中の微量水分を高速・高感度・高精度に測定可能な世界最小サイズと簡単操作を実現した日本初のCRDS微量水分計「DewTracer(デュートレーサー) mini CRDS-H2O」を製品化

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ガス中の微量水分を高速・高感度・高精度に測定可能な世界最小サイズと簡単操作を実現した日本初のCRDS微量水分計「DewTracer(デュートレーサー) mini CRDS-H2O」を製品化

半導体、バッテリー、機能性フィルムなど、高度な次世代技術を必要とする製品では、製造プロセスに残留するごく微量な水分が、品質、性能、歩留まりへ大きな影響を与えます。各国の研究機関や企業で、この微量水分を測定する技術の研究開発が進められていますが、量産化された事例はまだほとんどなく、日本が強みを持つ半導体の製造工程で使用されるガスのメーカ等からは、半導体の製造現場で使用できるガス中の微量水分計測器の実用化と国産の計測器の量産化が強く求められていました。
当社子会社の神栄テクノロジー株式会社(本社:神戸市中央区、代表取締役社長:小山文也、以下、神栄テクノロジー)は、微量水分計測で世界トップレベルの研究機関である国立研究開発法人 産業技術総合研究所 物質計測標準研究部門 ガス・湿度標準研究グループ(以下、産総研)との共同研究により、ガス中の微量水分を高精度、かつ高感度で高速に測定し、製造現場の要望に対応する小型サイズと各種機能も備える、キャビティリングダウン分光法(詳細は下記1.の説明をご参照下さい、以下CRDS)を用いた、世界でも類を見ない画期的な小型微量水分計「DewTracer mini CRDS-H2O」の開発と量産化に成功しました。2023年7月より販売開始予定です。


CRDS小型微量水分計「DewTracer mini CRDS-H2O」
URL. https://www.shinyei.co.jp/stc/products/humidity/crds.html

※ 本研究の一部は、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙探査イノベーションハブとの共同研究により実施しました。

1.産総研との共同研究に至った経緯

CRDSがガス中の微量水分の測定方式として優れた測定能力を持つことは知られていましたが、技術的な課題によりサイズの大型化とコスト高が避けられず、量産化も難しいとされていました。

~ CRDS( Cavity Ring-Down Spectroscopy )とは? ~
微量水分を含むガスを満たした、両端に高反射率ミラーが設置された密閉容器(キャビティ)へ特定波長のレーザー光を入射し、光が反射を繰り返す過程で光量がある一定の率まで減衰する時間を基に、水分濃度を算出する方式。
電気的変化(静電容量等)や温度変化(鏡面冷却式等)から水分濃度へ変換する他の水分測定方式とは全く異なり、光の減衰から計算式で水分濃度を直接算出できることから、理想的な「絶対測定法」とされています。

神栄テクノロジーは、レーザー式露点計TDLASを日本で初めて量産化するなど湿度水分測定の分野では高い製品開発力を有しており、産総研は、国際単位系(SI)に適合する(トレーサブルとなる)微量水分の基準となる設備(一次標準ガス)を整備している世界でも数少ない研究機関であり、またCRDSについて世界トップレベルの技術を有していることから、共同して国産による世界初の現場普及型CRDS微量水分計の実用化を目指すこととしました。

2.DewTracerの常識を覆す世界初の2つのコア技術

小型キャビティでは高精度測定はできないと言われていましたが、産総研との共同研究により、これまでになかった2つの新しい技術を開発し確立したことで、これまでの常識を覆す画期的な世界初の微量水分測定システムを構築しました。

①  微量水分検出部(キャビティ)の小型化
各国の研究開発では数十センチメートル以上が必要とされていたキャビティの長さを、5センチメートルまで小型化しました。

②  新たなCRDS解析手法の構築
上記の小型キャビティから得られる出力信号に対し、新たな理論を用いた独自の解析手法を開発できました(特許出願中)。

3.CRDS小型微量水分計「DewTracer mini CRDS-H2O」について

上記の2つのコア技術を用いた現場対応型CRDS小型微量水分計は、「DewTracer mini CRDS-H2O」として、2023年7月より量産と供給を開始する予定です。
微量水分検出部を内蔵するセンサ部と、解析処理を行うモニタ部で構成されています。
モニタ部は専用ソフトウェアをインストールしたパソコンで代用することもできます。

 


– 主な仕様
測定範囲   :12 ppb~20 ppm(モル分率)
サンプルガス種:Air, N2, O2, Ar, CO2
センサ部 寸法:150(W)×300(D)×165(H) mm
モニタ部 寸法:150(W)× 80(D)×200(H) mm
電源     :100~240 VAC, 1.4 Amax

– 国家標準とのトレーサビリティの確保
産総研の一次標準で不確かさの算出を含めた校正がされた器体を校正基準器として校正した製品を出荷します。

– 製造現場へ対応する各種機能
センサ部とモニタ部を分離するセパレート構造としていることで、センサ部は測定現場へ設置し、モニタ部は制御室に設置するという使用方法にも対応できます。また、モニタ部の背面にはRS-232C出力等を備えており、測定データの管理も容易です。

※ CRDS小型微量水分計「DewTracer mini CRDS-H2O」に関する詳細はこちら
URL. https://www.shinyei.co.jp/stc/products/humidity/dewtracer-minicrds.html

4.今後の拡大展開について

神栄テクノロジーは、湿度分野のパイオニアとして、鏡面冷却式露点計やTDLASなど信頼性の高い高精度湿度計測器を提供してきましたが、CRDS微量水分計の製品化により、国家標準とのトレーサビリティを確保した高精度計測器をすべての湿度領域(微量水分、低湿度、常湿度、高湿度)においてラインナップする唯一の国内メーカとなります。
湿度・露点測定方式の中でも、CRDSは理想的な絶対測定法であり、信頼性が高く優れた測定方式である一方で、従来の設計理論では、高い水分濃度の測定には対応できないと考えられていました。今回、産総研との共同研究で開発した世界初のCRDSシステムでは、微量水分計として小型化を実現しただけではなく、より高い水分濃度の測定にも応用展開ができることから、今後、「DewTracerシリーズ」として製品群を拡大し、水分管理が重要となる次世代の基幹産業を担う製造技術を支援することで、先端技術分野における日本の国際的な競争力強化へ貢献してまいります。

※ DewTracer(デュートレーサー)の名称は、露点(Dew)測定において、SI単位とトレーサビリティ(Traceability)が取れた測定精度の信頼性と、露点の変動を高速で追跡(Trace)する機能をあらわす意味を込めています。(商標登録出願中)

 

神栄テクノロジー株式会社